#2 フットサルトレーニングメニュー作成時の3つのポイント

考え方

みなさんこんにちは。
今回は、トレーニングメニュー作成時の考え方について考えていこうと思います。

早速ですが、競技フットサルチームの目的は何でしょうか?

チームによっていろんな考え方があると思いますが、多くのチームが「公式戦での勝利」を目指すはずです。その中で公式戦に向けてトレーニングやトレーニングマッチでその確率を上げていく作業をしていきます。

しかし、なかなかトレーニングメニューの構築が難しいことから、毎回同じトレーニングをしていたり、紅白戦が多くなっているということもあるかと思います。

もちろん、そのようなトレーニングにもメリットはあります。しかし、何も考えずに実施するのは非常にもったいないため、トレーニングメニューを作成する上で考えるポイントを紹介いたします。

少しでもみなさんの参考になればと思います。

トレーニングメニュー作成における3つのポイント

トレーニングメニューを作成する上で私が重要だと考えている3つのポイントについてご紹介します。

1 目的 - 達成したい成果は何か –

1つ目のポイントで、最も重要なものは「目的」です。まず、何をトレーニングすべきなのかを考える必要があります。

「公式戦での勝利」を達成するためには、大きく分けて2つの手段があると考えます。

  1. 得点を増やす
  2. 失点を減らす

その中でチームの現状を分析し、課題を認識し、達成したい成果は何かを決定する必要があります。それでは実際の例を用いて説明します。

例 自チーム分析1

現状分析 失点が多い
課題 抽象化 セットプレーの失点が多い
課題 具体化 CKにおけるアウトサイドからのシュートを打たれるシーンが多い
達成したい成果 アウトサイドからのシュートに対して距離をつめること

例 自チーム分析2

現状分析 得点が少ない
課題 抽象化 シュート本数が少ない
課題 具体化 ゴール前にボールを運べていない
達成したい成果 プレス回避のパターンを構築

また、公式戦では対戦相手の情報を踏まえてトレーニングする場合もあります。その場合は相手の分析を行い、対抗策を考えることが重要です。

例 相手チーム分析1

相手分析 能力の高いPIVOが脅威である
対抗策 PIVOにパスを入れさせないようボールへのプレスを高める
採用する戦術 オールコートプレス
達成したい成果 オールコートプレス時のボールホルダーへのプレッシャー

例 相手チーム分析2

相手分析 能力の高いPIVOが脅威である
対抗策 PIVOに入れられた後の対応として味方の距離を近くする
採用する戦術 ハーフコートプレス
達成したい成 PIVOにパスを入れられた後のカバーリング

2 適切なリアリティ - 試合で起こり得るか –

2つ目のポイントは「適切なリアリティ」です。つまり、そのトレーニングで起こる現象は、試合で起こり得るのか?ということです。

もちろん、何かを制限したり付け加えれば付け加えるほど本来のフットサルとはリアリティがなくなり、そのトレーニングが試合の一部分に近いほど、リアルになります。

ただし、全てのトレーニングをリアリティがあるものにする必要はありません。

相手がいない状況や、通常よりもゆっくり行うなど、実際の試合とはリアリティがないトレーニングでも、初期の理解を深めることができます。

逆に言えば、リアリティがあるトレーニングほど、達成したい成果以外の要素が含まれ、より選手の意識は複雑化します。

選手の理解度や能力に応じて、リアリティの具合を調整し、最終的には実際の試合に近いトレーニングにしていきましょう。

それでは実際のトレーニング例を用いて説明します。

トレーニング例

達成したい成果 : PIVO当てのシュートパターンを構築する

1.導入期 低リアリティ

ALAからPIVO当てし、落としてシュート

メリット デメリット
  • PIVO当てという戦術の理解
  • 相手がおらず、当てた選手が走る方向、PIVOが落とす位置の基礎を確認できる
  • シュートを打てる可能性が高い(シュートのトレーニング、GKのトレーニングも併せて行える)
  • PIVO当てしか選択肢がない(選手の判断が伴わない)
  • 相手がいないため、実践的ではない

2.構築期 中リアリティ

ALAで1対1+PIVO

メリット デメリット
  • ALAが1対1かPIVO当てのどちらかを選択する必要がある(判断が伴う)
  • 守備者をつけることによりPIVOに当てるタイミングを学べる
  • ALAの守備のトレーニングも併せて行える
  • 1対1の勝負時にのPIVOがセグンドに入る習慣を身に着けられる
  • PIVO当て後はFIXOがいないためリアリティに欠ける
  • シュート数が激減する可能性がある

3.発展期 高リアリティ

サイドで1対1+PIVO、FIXO

メリット デメリット
  • PIVO当て後もFIXOがいるため、試合により近い状況を作れる
  • PIVOがシュートを狙うシーンを作れる
  • 守備側の連携強化につながる
  • FIXOはPIVO当てへの対応と1対1のカバーの両方を求められる
  • 攻撃側のレベルによっては突破が非常に難しい

トレーニング例のように、同じ「PIVO当てのシュートパターンの構築」のトレーニングであっても、少し変えるだけでリアリティは大きく異なります。

一見、リアリティが高い方が良いと考えられるかもしれませんが、決してそうではありません。リアリティが高いほど、選手には多くの選択肢があります。

例えば、上記3.発展期の高リアリティのメニューでは、ALAはPIVO当てとドリブルの両方を選択できます。指導者として、守備側も気になることが出てくるかもしれません。そうなると、元々の達成したい成果である「PIVO当てのシュートパターンを構築する」の達成が難しくなる可能性があります。

しかし、低リアリティのトレーニングばかりでは実際の試合で活用できるわけではありません。

では実際どのようにすればよいかということですが、私が考える解決策の例を一つご紹介します。

1.1→2→3のトレーニングを順番に行う(成熟度に応じて1や2を省略可)
2.2チームに分け、チーム対抗の競争とする。このとき、PIVO当てから得点した場合は2点とする。

シンプルですが、PIVO当てからの得点に対してはインセンティブをつけ、競争形式にすればリアリティを損なわずに達成したい課題を解決できる可能性があります。

また、リアリティが低いトレーニングにより基礎を習得、リアリティが高いトレーニングで応用するという過程により、選手の理解が高まる可能性はあると考えています。

3 モチベーション - 選手の意欲は高いか –

3つ目のポイントは「モチベーション」です。

どんなメニューを構築したとしても、プレーをするのは選手です。選手が高い意欲を持って行えるように考慮してトレーニングを構築する必要があります。

つまり、難しすぎたり、簡単すぎたりする課題は選手のやる気を削ぐ可能性が考えられるため、適宜変更も必要になる場合があります。それでは実際のトレーニングメニューを用いて説明します。

トレーニング例 1

達成したい課題 : ボールポゼッションの向上

オーガナイズ 基本ルール
  • ピッチサイズ20m×20mのハーフコート
  • ピッチ内で4対1のロンド
攻撃側ルール 守備側ルール
  • フリータッチでプレー
  • ボールを奪えば攻撃と交代

このようなルールでは攻撃側に有利すぎる可能性が高いと考えます。このようなメニューでは攻撃側は簡単すぎて、守備側は難しすぎて、選手の意欲は高まりません。また、達成したい課題である「ボールポゼッションの向上」も達成しているとは言えないと思います。

トレーニング例 2

達成したい課題 : ボールへのプレッシング

オーガナイズ 基本ルール
  • ピッチサイズ20m×20mのハーフコート
  • 2つのゴールを使用
  • 2対2+PIVO2人+GK2人
攻撃側ルール 守備側ルール
  • タッチ制限はなし
  • 攻撃側両サイドの縦にPIVOを配置する
  • PIVO2人は2タッチアンダー
  • 特になし

一見成り立ちそうなメニューですが、選手が意欲的にボールへプレッシングに行くことは難しいと考えます。このトレーニングではボールへのプレッシングを求めているのに、攻撃側の選択肢が多いためなかなかプレッシングに行くことはできないと思います。選手目線では、「がんばってプレスをかけても簡単にPIVOに入れられて余計にしんどい…プレスかけるのやめよう…」となりかねません。

では解決策の案4つを説明します。

1.PIVO当ては1タッチのみ可能
PIVO当てを1タッチにすると、攻撃側がコントロールした後にPIVO当てができなくなり、プレスに行くタイミングを考えることができます。
2.PIVOを2人ではなく、1人にする
PIVOが2人では、両方のパスラインを制限することはなかなか難しいですが、PIVOを1人にするとパスラインを制限できる場面も増え、プレスに行きやすくなります。
3.PIVOをなくす

PIVO当ての選択肢がなくなったため、よりプレスに行くことができます。ただし、前へのパスの選択肢がなくなるため、リアリティは下がってしまいます。よって、トレーニングの初期段階で実施し、とにかくボールにプレスをかけることを求める場合に採用するのが良いと考えます。

4.PIVOをなくし、攻撃側のタッチ制限を設ける
3.のルール変更以上にボールへのプレスを行くことができるようになります。3.のケース以上により初期のトレーニングとして採用するのが良いと考えます。
ここで説明した4つの案ですが、4が最も初期段階で、1に近付くほど成熟度が高い(守備側に不利なルール)となっています。
現状よりも低すぎれば選手にとっては簡単になるし、高すぎれば実現不可能で選手の意欲が高まりません。チームや選手たちの状況を踏まえ、現状よりも少し上のレベルが求められる設計がベストと考えます。

まとめ

今回、トレーニングメニュー作成時の考え方について3つのポイントをお伝えしました。

1 目的 - 達成したい成果は何か –
2 適切なリアリティ - 試合で起こり得るか –
3 モチベーション - 選手の意欲は高いか –

トレーニングをする目的や達成したい課題を整理し、チームの状況に応じて最適なリアリティで、選手たちの現状より少し上の力が求められるようなトレーニングを実施することが重要であると考えています。

まずは「達成したい課題」をしっかり考えるところから始めましょう。その上でリアリティとモチベーションの面を考えてもらえればと思います。

今回は以上になります。ありがとうございました!

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