みなさんこんにちは。
AFCフットサルアジアカップ2024の日本代表のグループリーグ第3戦、タジキスタン戦が行われ、1対1の引き分けで日本代表はグループステージ敗退と予期せぬ終わりを迎えることになりました。この結果、今年開催されるW杯の出場権を獲得できず、前回大会は予選無しでの出場であったため、2大会連続で予選敗退という結果になっています。
非常に悔しく、残念な結果になってしまいましたが、アジアカップ全体の日本代表の総括、そして今後の日本代表の進むべき方向性について考えていきたいと思います。
キルギス代表戦、韓国代表戦、タジキスタン代表戦の分析記事も併せてご覧いただければと思います。
木暮ジャパンがもたらしたもの
日本フットサルの底上げ
木暮監督は2021年に開催されたW杯終了後に日本代表監督に就任し、U20日本代表監督も兼任しました。それらの活動の中で、若い選手を積極的に招集したり、代表活動に帯同させたりと、日本のフットサルの底上げに貢献したと考えます。特に石田選手や堤選手、金澤選手は前回のW杯メンバー以外の選手で、木暮ジャパンにより日本の主力に成長した選手であると言えます。
前回のW杯と今回のアジアカップのメンバーを比較します。
ワールドカップ2021 | アジアカップ2024 | ||||
GK | ピレス・イゴール | 41 | GK | ピレス・イゴール | 43 |
GK | 関口 優志 | 29 | GK | 黒本 ギレルメ | 37 |
GK | 矢澤 大夢 | 27 | |||
FP | 星 翔太 | 35 | FP | 仁部屋 和弘 | 36 |
FP | 西谷 良介 | 35 | FP | 安藤 良平 | 36 |
FP | 皆本 晃 | 34 | FP | 吉川 智貴 | 35 |
FP | 星 龍太 | 34 | FP | 長坂 拓海 | 29 |
FP | 吉川 智貴 | 32 | FP | 新井 裕生 | 28 |
FP | オリベイラ・アルトゥール | 31 | FP | 平田 ネトアントニオマサノリ | 28 |
FP | 森村 孝志 | 30 | FP | 石田 健太郎 | 26 |
FP | 室田 祐希 | 29 | FP | 堤 優太 | 25 |
FP | 逸見 勝利 ラファエル | 29 | FP | 山田 凱斗 | 24 |
FP | 加藤 未渚実 | 28 | FP | 甲斐 稜人 | 22 |
FP | 八木 聖人 | 27 | FP | 金澤 空 | 22 |
FP | 清水 和也 | 24 | FP | 山中 翔斗 | 21 |
FP | 毛利 元亮 | 20 | |||
平均年齢 | 30.3 | 平均年齢 | 29.4 | ||
平均年齢(GK) | 32.3 | 平均年齢(GK) | 40.0 | ||
平均年齢(FP) | 29.8 | 平均年齢(FP) | 27.7 |
GKの年齢は高くなっていますが、FPの平均年齢は2歳以上若返りました。さらに、20代の選手はW杯が6名、アジアカップが9名、25歳までの選手がW杯では2名、アジアカップでは5名と、若い選手の人数自体も増加しています。大事な大会でベテランの経験に頼りたい部分はあると思いますが、若手選手の育成に取り組み、日本フットサルの底上げに寄与したと思われます。
国内におけるフットサル戦術の浸透
木暮監督が採用する戦術については、日本のフットサル指導者や選手に大きな影響を与えたと思っています。特に、シュライカー大阪で一世を風靡したボランチや、ラインカット、GK活用は、Fリーグや育成年代、地域のチームでも当たり前に使われている戦術です。それそれの戦術の良し悪しはそれぞれのチームによって変わるものですが、指導者や選手に与えた知見の効果は大きいと考えます。
アジアカップ2022優勝
もう2年前とは思えませんが、前回大会であるアジアカップ2022で日本代表は優勝を成し遂げました。今回のアジアカップはW杯予選を兼ねているため、各国の注力度は異なるかもしれませんが、それでも初戦で敗れた中で優勝を成し遂げたことは日本フットサルにとって非常に大きなものであり、特に参加した選手にとっては大きな財産になったと言えます。それだけに、今回の予選敗退のショックは大きいのでしょう。
今後の日本代表の課題
主力への依存度の高さ
木暮監督体制においては、主力選手への依存度が高い試合が多かったように思います。アルトゥール選手や吉川選手、清水選手、平田選手などが多くの時間出場し、他の選手がなかなか出場時間が多くないということはあったように思います。もちろん日本代表なので、簡単に出場時間を与えられるべきだとは思いません。今大会はその主力選手が欠場したことは不運ではありますが、主力選手の欠場によって積み上げてきたことが崩れてしまった可能性はあると考えます。
クラブと異なる戦い方
今大会で日本代表が取り組んだ4人での流動的なボール保持について、私個人は好意的に捉えています。世界と戦うために日本人の良さを活かした戦術であり、W杯で世界の強豪と戦う姿を見たかったです。
しかしながら、現在の日本代表にとっては難易度が高い戦術であったと考えます。原因の一つとしては、Fリーグクラブと日本代表の戦い方が異なるということです。FリーグのクラブではPivoを最前線に配置し、そのPivoを起点に攻撃をするチームが主流です。4-0でのボール保持をするチームもありますが、オプションでの起用であったり特定のセットのみ実施するようなケースが多く、4-0へ馴染みがある選手は多くありません。その点からもなかなか戦術理解が進んでいないように見受けられました。
前への推進力の低下
今回取り組んでいた4-0でのボール保持については、「アルカ」と呼ばれるボールホルダーに対する背中方向のマイナスサポートを中心に実施しています。そうなった際に、相手の背後を取るアクションが減る傾向にあると考えます。さらにPivoの選手も最後尾でプレーすることが多くなるため、ボールが一気に最前線に運ばれることがなくなり、前への推進力が低下したことが言えるでしょう。今回の大会でも日本はボールを保持する時間は多かったものの、なかなかゴール前に持ち込めず、相手の脅威となることができなかった印象があります。日本をリスペクトしてくるアジア諸国との対戦ではプレス回避の重要性は高くなく、相手陣地に入った場合でもサイドでの1対1が多くなり、厚みをもった攻撃ができなかったように思います。
セットプレー
この大会でも、これまでの試合でも、日本代表はセットプレーでの失点が多いことが目立ちました。代表活動は時間がないため、なかなかその部分に注力する時間がないことは承知の上ですが、失点が多い傾向にあります。
また、得点についても、第2PKの2本を除けばセットプレーでの得点はありませんでした。強烈なシュートを持つアルトゥール選手や清水選手が不在の影響はありますが、前回大会は17得点中セットプレーで5得点がセットプレーとなっていて、一つの得点源でした。
短期決戦でのセットプレーの重要性は言うまでもないですので、今大会前にどれほどのトレーニングを実施したかはわかりませんが、今大会に向けては結果的にもう少し注力すべき内容であったと考えます。
マンツーマンディフェンス
現在の日本代表は完全マンツーマンディフェンスを採用していますが、この点については日本人には不向きではないかと考えています。勤勉な日本人の特徴としては、カバーリングを構築した上でボールホルダーに対して迫力を持ったプレスを実行する方が日本人向きではないかと考えています。
今大会では、少しプレスの強度が低い場面があるように思いました。自分がマークする選手が背後に走ると必ずついて行かなければなりませんので、なかなか心理的に距離を詰められないということが原因の一つだと考えます。ゾーンディフェンスを組織化する時間はありませんので、マンツーマンをベースにある程度選手に余白を与えた上でマーク交換を可能とする守備の方が日本人向きだと思っています。
フットサル日本代表の進むべき方向性
今後の日本代表については、木暮監督は「続投」、攻撃は継続、守備は微改善が望ましいと考えます。
フットサル日本代表は2036年の優勝を目指していますので、その長期目標に向けた取り組みとしては、大筋正しい方向と言えます。特に攻撃に関しては世界と戦う上での日本人の良さは十分に発揮できると考えています。
実際にどのように強化し、まずはアジアで勝つことができるチームにするかという点ですが、「日本代表のプレーモデル」を定めることが重要だと考えます。そしてそれに合った指導者を日本人、外国人に限らず招聘するということです。
Fリーグでそのような戦術を取り組むチームが少なく、日本のプレーモデルとして戦うにはまだまだ時間が不十分でした。2036年までに日本のプレーモデルを確立し、W杯で優勝を目指すことが日本代表の目指す方向性ではないでしょうか。
では、日本代表のプレーモデル化するための具体的なプランを、実現可能性はさておき、提案させていただきます。
まずは2036年でのW杯優勝という目標の中で、26~30歳程度の選手が主力だと考えると、現在14~18歳の選手に該当します。中高生がそのターゲット層になりますので、その層を中心に強化する必要があります。
1つ目の案である育成年代の地域交流大会ですが、各地域での選抜大会のようなものをイメージしています。各地域の指導者にはJFAチューターが担当し、全チームが日本代表のプレーモデルで戦います。そうした中で選ばれたメンバーが現在も実施しているナショナルトレセンのように集まり、さらに強化を図るというものです。
現在のトレセン活動は数日のものになりますので、まずは各地域で概要を学んだ後に、選抜されたメンバーが日本代表コーチングスタッフによる指導を受けることで、育成年代から日本代表のプレーモデルを学ぶことができると考えます。
2つ目の案は、Fリーグ選抜の復活です。過去と同様、若手選手を集めて、日本代表のプレーモデルで1年間Fリーグを戦うことです。Fリーグ選抜の指導者は可能であれば日本代表コーチングスタッフで、難しければJFAチューターが行います。若手選手が1年間を通して日本代表のプレーモデルの中でプレーする経験をすれば、将来的に日本代表で主力として活躍できる可能性は十分にあると考えます。
まとめ
今回は、AFCフットサルアジアカップ2024を終えて、日本代表の進むべき方向性について考察しました。アジアカップで結果は出ず、W杯にも出場はできませんが、日本が進むべき方向性は大きくは間違っていないと感じています。
ショッキングで受け入れ難い結果にはなりましたが、2036年W杯で優勝するためにはこの敗戦も必要なものだったかもしれません。この戦い方で日本代表が勝つために、育成年代やFリーグ、フットサル界全体でどれだけ施策を打てるか、どのように行動するかが重要になるのではないでしょうか。
それでは今回は以上になります。ありがとうございました!
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